デザインのデザイン

 

 

デザインのデザイン

デザインのデザイン

 

 

「デザインのデザイン」(著:原研哉)は、大学時代、広告代理店のインターンシップに通っている際に、講師のクリエーターに紹介されたのがキッカケで読んだ本だ。

 広告クリエーターに憧れ、貪欲に広告関係の本を読み漁っていた時は過ぎ、クリエーターとは程遠い仕事をしている30歳を超えた僕が、この本を読むのは今回で3回目になる。この本をよって、「モノの形状」という意味でしかなかった「デザイン」という言葉の認識を格段に拡げることができた感動を思い出して何回も読んでいるのである。

 下記は本著のまえがきの引用だが、読後には、まさに「コップ」を「デザイン」に置き換えた状態となり、「デザイン」について注意深く認識するようになる。

何かを分かるということは、何かについて定義できたり記述できたりすることではない。むしろ知っていたはずのものを未知なるものとして、そのリアリティにおののいてみることが、何かをもう少し深く認識することに繋がる。たとえば、ここにコップがひとつあるとしよう。あなたはこのコップについて分かっているかもしれない。しかしひとたび「コップをデザインしてください」と言われたらどうだろう。デザインすべき対象としてコップがあなたに示されたとたん、どんなコップにしようかと、あなたはコップについて少し分からなくなる。さらにコップから皿まで、微妙に深さの異なるガラスの容れ物が何十もあなたの目の前に一列に並べられる。グラデーションをなすその容器の中で、どこからがコップでどこからが皿であるか、その境界線を示すように言われたらどうだろうか。様々な深さの異なる容器の前であなたはとまどうだろう。こうしてあなたはコップについてまた少し分からなくなる。しかしコップについて分からなくなったあなたは、以前よりコップに対する認識が後退したわけではない。むしろその逆である。何も意識しないでそれをただコップと呼んでいたときよりも、いっそう注意深くそれについて考えるようになった。よりリアルにコップを感じ取ることができるようになった。

  原研哉は「デザインは単につくる技術ではない。むしろ、耳を澄まし目を凝らして、生活の中から新しい問いを発見していく営みがデザインである」と語っている。このブログを通じて、新しい問いとまではいかないまでも、日々の生活の中で感じたことを備忘録も兼ねて、発信していければいいと思う。